クリニックの機密情報漏えいに対する懲戒解雇

クリニックの機密情報漏えいに対する懲戒解雇

2015年01月16日(金)10:24 AM

本日の質問

当院の職員の自宅パソコンがウイルスに感染し、患者情報が外部に流出していたことが判明した。

 

この職員はクリニックのパソコンから無許可で患者情報を個人のUSBメモリに保存して、自宅で仕事するのが常習化していたようである。

 

当院の就業規則では機密情報漏えいは過失によるものも懲戒解雇となり得るため、この職員を懲戒解雇しても問題ないか。

 

本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹

就業規則上、過失でも懲戒解雇の対象となることが職員に周知され、クリニックが院内外でのセキュリティ体制を徹底させたうえで今回の行為が起きたのであれば懲戒解雇の対象ともなり得ますが、実行するには慎重な判断を要します。

 

本日のポイント

懲戒解雇が認められるかどうかの主なポイントは次の2点にあります。

 

(1)懲戒事由該当性…当該非違行為が就業規則の懲戒事由に該当するかどうか

今回のケースでは、就業規則で過失による機密情報漏えいも懲戒解雇の対象となり得ると規定されており、これに該当すると言えます。

 

(2)権利濫用性…懲戒の必要性と労働者の不利益のバランスからみて「重きに失していないか」

今回のケースでは、懲戒処分として最も重い懲戒解雇を科しており慎重な判断を要します。そこで、「過失による機密情報漏えいに対し懲戒解雇が重すぎないか」を考えますが、クリニックが自院の患者情報を外部に流出させたことが公に判明すると、当該クリニックの経営に影響を及ぼすほど重大な事態になる恐れがあります。

従って、このケースのように、機密情報漏えいの重大性を職員に対し喚起するため、過失によるものも懲戒解雇の対象としても妥当性があります。

 

しかし一つ注意したいのは、クリニックのセキュリティ体制の問題点です。この職員は常習的にクリニックのパソコンから患者情報を抜き出しており、ここにクリニックのセキュリティ体制の不備を指摘される恐れがあります。このため、実際に懲戒解雇とするかどうはこの職員の過失の程度やクリニックが被る損害の程度なども考慮して慎重に判断した方がよいでしょう。



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