疑問解決!開業医のための「医療法人の基本」

疑問解決!開業医のための「医療法人の基本」

2014年12月29日(月)11:17 PM

本日の質問

現在診療所を経営していますが、「医療法人」にすればメリットが多いとよく聞きます。

ところで、そもそも「医療法人」とはどのようなものなのでしょうか?

 

本日の回答/行政書士 天川大輔

医療法人の概念を考える意味とは?

ちょっと調べれば医療法人についての情報はいくらでも手に入れることができます。

特にみなさんが気になるのは医療法人化するメリット・デメリットだと思います。

ただ、そもそも「法人」って何なのか、診療所等個人事業の場合と何が違うのか、考えたことがある方は多くないのではないでしょうか。

ちょっと理屈っぽい話にもなってしまいますが、この医療法人化のメリット・デメリット、そして法人化した後の税務・会計などにも関わってくることなので、一度この点を検討してみることは無駄ではないと思います。

法人とは?

法人とは簡単に言ってしまえば、法律によって特別に人と同じである(=権利義務の帰属主体である)と認められた一定の存在のことをいいます。

もっと身近な例で分かりやすく説明してみましょう。

例えば、「A医師」が個人として開設した「A診療所」。これは実質的には「A医師=A診療所」です。

一方、「A医師」が管理者・責任者かつ医療法人のトップである理事長に就任して設立した「A医療法人」。
この法人は法律によって特別に人と同じであると認められた一定の存在、逆に言えば、いくら責任者・理事長とはいえその人(A医師)とは別の存在・人格になりますので、「A医師≠A医療法人」となるのです。


生身の「A医師」と法人である「A医療法人」は、もはやAさんとBさんと言った全く別の存在と法律上はなってしまうと考えてもいいかもしれません。

これがどう実務に影響する?

ちょっと教科書っぽい話になってしまいましたね。
でも、このトップの地位の医師等と医療法人は別の存在なんだ、ということを理解しておくと、色んなところで他の話が分かりやすくなるので、触れておきました。

例えば、よく言われる医療法人だと理事長本人が一線を退いても、ご子息等に地位を承継し病院等を継続できる、というメリット。

これは理事長本人と病院等を経営する医療法人は別の存在なので、理事長が変わっても医療法人の存在には影響しない、という意味なのです。

医療法人にも種類がある

どのような点で種類分けするかにもよりますが、医療法人はいくつかの種類に分けることができます。
最もオーソドックスな分け方は、「『社団』か『財団』か」の分け方です。

「社団」というのは簡単に言ってしまえば『人』の集まりです。

複数のメンバーが集まって設立します。
株主という人が集まって設立される通常の株式会社と同じイメージです。


一方で、「財団」というのは『お金』の集まりです。
個人や法人が寄付した財産に基づいて設立されます。


では、どっちがいいのかという点ですが、通常は後々の運営のしやすさ、設立のしやすさを考え、人の集まりである「社団」として医療法人を設立します。
数字的にも、平成25年3月31日の時点で全医療法人数のうち実に99.2%が社団で、財団は0.8%に過ぎません(厚生労働省「種類別医療法人数の年次推移」より)。

『医療法人社団○○会』といった名称をよく見かけるのはそのためです。


他にも、「『社会』医療法人」、「『特定』医療法人」といった種類もあります。
これはそれぞれ医療法、租税特別措置法に基づき、特別に認められたもので、税制上の優遇措置等を受けることができます。詳しくは別の機会で触れたいと思います。

医師一人でも医療法人は作れる?

「一人医師医療法人」という言葉もあるので、ここで触れておきます。

よく、医療法人というと大規模な組織形態をイメージするため、医師一人だけだと医療法人化はできないと思ってる方もいらっしゃいます。


確かに、昔は3人以上の医師が法人化には必要でしたが、今は医師が一人でも医療法人を設立することは可能です。


医師お一人でも医療法人化によるメリットの追求は可能ですので、将来的な経営プランの考慮にあたり、一つの選択肢として積極的に検討されることをお勧めいたします(実際、全医療法人のうち83%が一人医師医療法人です)。



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