病院・クリニック向け「1年単位の変形労働時間制」のメリット

病院・クリニック向け「1年単位の変形労働時間制」のメリット

2015年01月27日(火)3:21 PM

本日の質問

労働基準法で認められた1年単位の変形労働時間制について、詳しく教えて下さい。

 

本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹

 

●労働基準法では、労働時間を原則として1日8時間、1週間で40時間を超えてはならない定めています(第32条)。

●しかし、病医院によっては、

「耳鼻科や眼科のクリニックで、花粉症の季節に患者が集中する」

「内科のクリニックで、風邪やインフルエンザが流行する冬季に患者が集中する」

「皮膚科のクリニックで、夏場に水虫などの患者が集中する」

などといったように、季節によって繁忙期があり、その時季は診療日を増やしたり、診療時間を延長したりして、原則の法定労働時間を超えて勤務時間を設定したいケースがあります。

 

●このような問題を解決する方法として、労働基準法第32条の4で定められた「1年単位の変形労働時間制」を導入する方法が考えられます。

 

●この「1年単位の変形労働時間制」は、所定労働時間を1年の範囲内で、1週平均40時間に納めれば、その間の特定の日や週において法定労働時間を超えてもよい制度ですので、柔軟な労働時間の設定が可能となります。

 

●1年単位の変形労働時間制とは、1ヶ月を超え1年以内の一定の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えなければ、あらかじめ特定しておいた日または週に、1日8時間または1週40時間を超えて、柔軟に労働時間を設定できる制度です。

● 1年単位の変形労働時間制を導入するには、職員数が10名以上の場合は就業規則に1年単位の変形労働時間制を採用することを規定したうえで、次の5つの事項を労使協定で定めて、労働基準監督署に届けなければいけません。

 

(1)対象労働者の範囲
(2)対象期間(1ヶ月を超え1年以内)および起算日
(3)特定期間(対象期間の中で特に繁忙な期間)の有無
(4)対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間
(5)労使協定の有効期間の定め(労働協約である場合を除く)

 

●届出が必要という点で就業規則で定めるだけで導入できる1ヶ月単位の変形労働時間制と比べて、導入の要件が厳しくなっていると言えます。
これは、1ヶ月単位の変形労働時間制に比べ、変形の対象となる期間が長く、職員にとっては、ある特定の期間で労働時間が不規則になったり、長時間化したりして、不利に働くことがあるためです。

 

●1年単位の変形労働時間制を採用するには1ヶ月を超え1年以内の範囲で対象期間を定め、その期間中の各日、各週の所定労働時間を定めることが必要です。

 

●対象期間を1年とした場合であれば、具体的には事前に病医院の年間カレンダーを作成するなどして定めることになります。
年間カレンダーをあらかじめ作成するのが難しい場合には、対象期間を1ヶ月以上の期間ごとに区分して、順次各日の労働日、労働時間を定めるという方法を取ることも可能です。

 

【対象期間を1ヶ月以上の期間ごとに区分する方法】

 

(1)最初の期間における労働日、労働日ごとの労働時間
まず、最初の期間の労働日とその日ごとの労働時間を労使協定により定め、労働基準監督署へ届け出ます。

 

(2)最初の期間を除く各期間における労働日数、総労働時間
その後の期間については、それぞれの期間の労働日数と総労働時間だけを定めます。これは、(1)と同時に労使協定により定め、労働基準監督署へ届け出ます。

(3)最初の期間を除く各期間における労働日、労働日ごとの労働時間
そして、(2)の具体的な労働日と労働時間は、各期間の初日の30日前までに職員代表の同意を得たうえで、書面で交付して下さい。

 

●勤務シフト制を取っているために、職員ごとに、対象期間中の各日、各週の所定労働時間をあらかじめ定めることが難しい場合は、この方法によって1年単位の変形労働時間制を導入して下さい。

 

●1年単位の変形労働時間制における時間外労働の算出方法は、通常の労働時間制の場合と異なり、下記のように特殊な取扱いが必要になります。

 

【1年単位の変形労働時間制における時間外労働の取扱い】

 

(1)1日について
 所定労働時間が
  8時間を超える日  → その所定労働時間を超えた時間
  8時間以内の日   → 8時間を超えた時間

(2)1週間について(次の時間からAを差し引いた時間)
 所定労働時間が
  40時間を超える週 → その所定労働時間を超えた時間
  40時間以内の週  → 40時間を超えた時間

(3)対象期間全体について(次の時間からA、Bを差し引いた時間)
 定労働時間の総枠を超えた時間

基本的には、各月(1)→(2)の順に時間外労働を算定し、対象期間(例:1年)が終わったところで(3)を算定することになります。


●1年単位の変形労働時間制を導入した場合の最大のメリットは、残業代の削減効果にあります。

●例えば、病医院によっては、

「耳鼻科や眼科のクリニックで、花粉症の季節に患者が集中する」

「内科のクリニックで、風邪やインフルエンザが流行する冬季に患者が集中
する」

「皮膚科のクリニックで、夏場に水虫などの患者が集中する」

などといったように、季節によって繁忙期があります。一方で、比較的患者数が落ち着く閑散期があるかもしれません。

 

●上記のような繁忙期に、職員に時間外労働をさせたり、休日労働をさせると、それらは残業代となって人件費の大幅なアップにつながってしまいます。

 

●ところが、1年単位の変形労働時間制を導入した場合、あらかじめ忙しい時期に多くの労働時間、労働日数を設定し、比較的来患数が落ち着く時期にそれらを減らし、年間での総労働時間を調整することで、これまで忙しい時期についていた余分な時間外労働・休日労働を減らすことが可能になります。

 

●繁忙期と閑散期がある病医院で、まだ1年単位の変形労働時間制を導入していないところでは、導入についてご一考下さい。



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