医療法人の国際事業展開
本日の質問
当院では将来的には国内のみならず海外においても病院経営を行いたい、と考えています。何か注意点はあるのでしょうか。
本日の回答/行政書士 天川大輔
■医療法人の海外事業展開はなぜ問題になるか
医療法人も数々の制約があるとはいえ、基本的には独立した経営主体の一つです。
よって、海外で病院を経営すること等国際事業展開も、一見自由に制約なくできるのでは、とも思えます。
しかし一方で、医療法人は公的な側面も否定できず、海外進出のための原資、つまり病院の売上は税金や社会保険料も少なからず含まれており、これを完全に自由とするには疑問が残ります。また、配当が禁止されているためその余剰資金を海外展開にあてることを自由に認めると、行き過ぎた自由診療の拡大にもつながりかねません。
そこで、医療法人の海外事業展開には一定の歯止めが要求されるのです。
■どのような制約があるか
まず大前提として、あくまで海外事業はサブ的な「附帯業務」行われること、すなわちメインである本来業務に支障のない範囲内でしか認められません。
次に、海外現地医療関係法人に出資をするにあたり、その出資の価額・総額は、直近の会計年度において作成された貸借対照表の繰越利益積立金の範囲内でなければいけません。また、その出資先の法人名、出資額等の届出も必要です。その他、毎会計年度終了後3か月以内に、事業報告書の提出も必要です。
この対行政機関の運用はまだ始まったばかりで、どこまで行政側に裁量があるかは今後の事例の蓄積を待つ必要がありますが、特に「あくまで附帯業務の範囲内でしか認められない(=国内事業の財務的健全性が大前提)」という点は揺るぎない基盤となりますので注意が必要です。
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