着替え時間は労働時間に当たるのか
本日の質問
事務職員が、就業前後に行う制服の着替えにかかる時間は労働時間ではないか、と過去分も含めて当該時間分の賃金を支払ってほしいと訴えてきた。
当院としては制服への着替え時間は労働時間ではないという認識を変えるつもりはなく、訴えを拒否したいが問題ないか。
本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹
制服への着替え時間が使用者から義務付けられたものであれば、労働時間に該当すると考えられます。着替え時間が1日の法定労働時間(8時間)を超過していた場合には、時間外割増賃金の支払いも必要です。
本日のポイント
●病医院では医師や看護師であれば白衣、受付事務職員にも専用の制服の着用が義務付けられるため、今回のケースはどこでも起こり得る問題といえます。
●このような制服の着替え時間が労働時間に該当するか否かについては、過去に幾つか争いが起こっており、厚生労働省通達でも判例でも、「労働時間に該当する」という立場をとっています。
●この立場によると、着替え時間だけでなく、業務の準備・後片付けのような本来業務に付随する時間が労働時間に当たるかどうかは、「使用者の指揮監督下」にあるかを客観的に判断するとしています。
●このため、病医院の施設内で、使用者に着用を義務付けられた衣服に着替えるといった行為にかかる時間は、「使用者の指揮監督下」にあると判断され、通常は労働時間に該当すると判断されるでしょう。
●とはいえ、制服の着替えに通常かかる時間(着替えながら同僚とおしゃべりする時間等は含まれません)はほんの数分程度、これを時間管理して賃金を支払うのは経営的にも実務的にも避けたいところです。
●一つの対策としては、着替えや準備・片付け時間も含めて、月例基本給を支払う旨を就業規則に明記する方法があります。これが、現状からの労働条件の不利益変更にあたる場合には、職員への丁寧な説明が必要です。
●但し、現状の所定労働時間が法定労働時間ギリギリの8時間で、着替え時間を含めると8時間を超過する場合には割増賃金の支払いを必要となり、上記方法は取れませんので、ご注意下さい。