医療法人解散手続き

医療法人解散手続き

2015年02月04日(水)3:17 PM

本日の質問

一人医療法人の理事長です。

高齢になり、後継者もいないので廃院を考えています。患者と職員の引継ぎは近隣病院に打診しようと思います。
他に何を考えるべきでしょうか。

本日の回答/税理士 吉田正一

医療法人が廃院する場合、医療法人の解散手続が必要です。


後継者がいない一人医療法人の解散のタイミングは
・理事長(医師)の引退、相続のとき
・19年3月以前設立の医療法人について、経過措置が廃止する前が多いです。

 

法人制度自体が、ゴーイングコンサーン(企業の永続性)を前提にしていますので、安易に解散する前に別の選択肢も検討すべきだと思います。

 

解散する前に検討する事項
● 出資持分を他の医療法人に売却(M&A)して、理事長が退職金と持分対価
  を獲得し、ハッピーリタイヤできないか

● 副院長や勤務医師に売却し(MBO)、患者や職員への影響を少なく
  引き継げないか

 

上記を検討した上で 解散を決断をした場合 時間的余裕があるなら個人の財産を保全するために解散対策を講じることが有効です。


解散対策の例
・医療法人が所有する財産を、理事長やMS法人へ移転する
・法人が不動産を所有している場合、遺言や贈与により 不動産の相続対策を行う
・子息が出資したMS法人に不動産を移転し、財産と医療以外の所得を移転する
・退職金規定と退職金原資(生命保険など)を手当する
・利益留保しないように、理事長、親族に 職務対価として妥当な範囲で給与支給する

 

医療法人を円滑に廃院するには行政手続のほかに患者、職員、取引先への配慮も必要です。

 

解散の判断をした場合のポイント
・解散までに 財産を理事長等に計画的に還元する(解散対策)
・解散により 患者、職員、取引先へ影響が大きくならないように配慮する

 


解散対策の例
・医療法人が所有する財産を、理事長やMS法人へ移転する
・法人が不動産を所有している場合、遺言や贈与により 不動産の相続対策を行う
・子息が出資したMS法人に不動産を移転し、財産と医療以外の所得を移転する
・退職金規定と退職金原資(生命保険など)を手当する
・利益留保しないように、理事長、親族に 職務対価として妥当な範囲で給与支給する

 


解散対策が十分にできなかった場合、次へ移行することも有効
・医療法人存続のまま休止にする
・個人診療所へ変更する

 

解散により患者、職員、取引先へ影響が大きくならないように配慮するには。次を一括で支払う原資が必要なので 事前に見積もる必要がある。

 

・医薬品代金の残高
・リースの残債
・金融機関の借入
・職員の退職金、未払残業代
・行政手続費用(医療法人届、登記、税金、社会保険)

 

解散により 患者、職員、取引先へ影響が大きくならないように配慮するポイント
・事前に 職場リーダー、保健所、金融機関(担保権者)に説明する
・職員の引継先を探し、同じ雇用条件になるように調整する
・患者の引継先を探し、経過中の患者を紹介する


患者の引継の注意点
・サービスを提供しておらず入金済(矯正歯科、入院保証金など)の精算金を払う
・未収(窓口未収金、窓口金調整)を督促、回収する
・弁護士の指導の下合意文書、契約書を作成できればなお可



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