クリニックが有期雇用のパート職員を雇止めする際のポイント
本日の質問
有期雇用のパート看護職員を雇止めしたい。勤続は10年で、常勤職員と同等の条件で勤務をしていた。
雇用期間は1年契約の自動更新で、雇用契約書は入職時に取り交わした後は特に作成していないが、問題はないか。
本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹
今回のケースのように、有期雇用契約であっても契約を反復更新し、職員が雇用継続を期待する合理的理由が認められる場合は、雇止めが認められない可能性が高いと言えます(労働契約法第19条)。
本日のポイント
●雇止めとは、有期雇用契約を反復更新した後に期間満了を理由として、雇用契約を終了させることを言います。
通常、有期雇用契約は、期間が満了すれば当然に終了するものであり、解雇とは異なりそこに正当な理由が求められるといったものではありません。
●ところが、有期雇用であっても契約を反復更新し、職員が「雇用継続を期待する合理的理由」が認められる場合は、雇止めが当然には認められず、通常の解雇に求めらるような理由がなければ雇止めが認められなくなってしまいます。
●これは過去の裁判例により確立されてきた考え方ですが、昨年8月10日に施行された改正労働契約法第19条に明文化されました。この「雇用継続を期待する合理的理由」について、過去の裁判例などでは次のような事項が論点になっています。
(1)業務の客観的内容 … 正社員との同一性など
(2)契約上の地位の性格 … 正社員との同一性など
(3)当事者の主観的態様 … 継続雇用を期待させる雇用者の言動など
(4)更新の手続き・実態 … 更新手続きの有無など
(5)他の職員の更新状況 … 同様の地位にある他の職員の雇止め有無など
●上記事項の中では、特に(1)と(2)が重視されており、名称はパート職員とされていても実質は常勤職員と同等の仕事をしている場合には、雇止めが認められない可能性が高くなります。
●また、(3)と(4)についても、雇用契約満了時に必ず書面を取り交わし、契約が有期であることを労使双方で都度確認しておかなければ、職員の雇用継続への期待が大きくなると判断されてしまいます。今回のケースのような契約の自動更新は、非常にリスクが高いと言えるでしょう。
●従って、いざという時に雇い止めを否認されないためには、日常の労務管理として有期雇用契約の更新手続きを適切に行うことが大切になります。