懲戒解雇でも退職金を支払わなければならないのか?
2015年01月27日(火)3:44 PM
本日の質問
当院の職員で、勤続歴が長く患者からの評判はよいのだが、職場内で度々トラブルを起こす職員がおり、この度、懲戒解雇した。
当院の退職金規程では、「懲戒解雇時は退職金を不支給とすることができる」と規定されているので退職金を全額支払わないつもりだが、問題はないか。
本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹
懲戒解雇の場合に退職金を不支給とする規定があっても、過去の判例等では、「永年の勤続の功労を抹消させてしまうほどの背信行為がない限り、退職金の不支給は許されない」とされており、今回の職員のケースで全額不支給とするには慎重な判断を要します。
本日のポイント
●退職金の性格には、次のような要素があると考えられていますが、いずれにしても退職金規程により支給条件等を定めている場合、賃金として扱われます。
・賃金の後払いとして支給するもの
・在籍期間中の貢献度合いや功労などへの報償として支給するもの
●退職金規程に「懲戒解雇時は退職金を不支給とする」規定を設けること自体は問題ありませんが、前述した退職金の扱いを鑑みると、あらゆる場合において、規定した通りに退職金を不支給とすることができるとは限りません。
●過去の判例等では、「永年の勤続の功労を抹消させてしまうほどの背信行為
がない限り、退職金の不支給は許されない」とされており、これに該当する
実務上の目安としては次のような事由が挙げられます。
・クリニックの財産の横領
・重大な秘密情報の漏洩
・クリニックの名誉・信用の毀損
・上司に対する暴行
●このため、退職金を全額不支給とする場合は、職員の非違行為の重大性や、それにより受けたクリニックの損害の程度を詳細に検討したうえで慎重にご判断下さい。