医療法人の業務範囲

医療法人の業務範囲

2015年01月29日(木)12:41 PM

本日の質問

医療法人として行うことのできる業務に、何か制限はあるのでしょうか?将来的には、診療所の運営に加え、有料老人ホームの設置も行いたいと思っています。 

本日の回答/行政書士 天川大輔

医療法人は、地域への医療行為の提供といった非常に公益性の高い業務を担っていることに加え、営利性が否定されているため、行うことができる業務の範囲は厳しく制限されています。
よって、本来の業務である、病院・診療所・介護保険施設の設置・運営しかできない、これが大原則です。

 

ただし、営利性が否定された医療法人とはいえ、その存在を継続させるため一定の利益を生み出す必要はあります。
また、幅広い医療関連サービスを同時に提供することができれば、利用者である患者の方にとっても非常にプラスとなります。

そこで、一定の範囲に限られますが、法律は医療業務以外の業務を行うことも認めています。

 

■医療法人が可能な業務は4つ

先にまとめてしまうと、医療法人が可能な業務は以下の4つです。

【原則】(1)本来業務、(2)付随業務 ←定款変更不要
【例外】(3)附帯業務、(4)収益業務 ←定款変更必要

ポイントは、

「検討している業務が原則的なものなのか、例外的なものなのか。そして、それは認められた範囲内なのか、それとも範囲外なのか」を見極めることです。

 

■原則的な業務=定款を変更する必要なし

まずは原則としてあげた「(1)本来業務」と「(2)付随業務」です。この2つの大きな特徴は、医療法人の定款を変更することなく行うことができる、という点です。

「定款」というのは、その法人の基本ルール、憲法のようなものです。いずれ取り上げたいと思いますが、普通の株式会社でしたらこの定款の変更は、社内だけで処理することができます。しかし、医療法人の場合は、定款を変更するためには都道府県知事の認可が必要です(医療法第50条第1項)。これは大きな負担です。

「(1)本来業務」というのは、まさに主目的の病院・診療所・介護保険施設の設置・運営業務です。一方、「(2)付随業務」というのは、開設する病院等の業務の一部として、又はこれに付随して提供される、医療・療養に連続して行われる業務を指します。

 

■【原則】-(2)付随業務について

開設する病院等の業務の一部として、又はこれに付随して提供される、医療・療養に連続して行われる業務です。病院施設内で患者の方やその家族、そして福利厚生面から職員を対象にして行われる医療・療養行為の一環として行われるもの、例えば病院の建物内に設置された売店、敷地内での駐車場、病院を起点にした無償搬送等が典型的なものとして挙げられます。

これらは収益業務ではなく付随業務として扱われ、定款を変更することなく行うことが可能です。

 

■【例外】-(3)附帯業務

「(2)付随業務」との区別が分かりにくいのですが、(2)付随業務と(4)収益業務の中間的な業務。医療・療養提供行為と何等かの関連はあるが、そこまで密接なものではないものがあたります。

ただ、これは医療法第42条で具体的な対象業務が列挙されていますので、それに該当するかどうかで判断します(実際の該当性判断は難しいことが多いのですが)。

 

具体的には、
*(医師等が常時勤務しない)巡回診療所・へき地診療所の開設
*疾病予防温泉利用施設の設置
*有料老人ホームの設置
などが認められています。

 

これらを行う場合は定款変更手続を行い、都道府県から認可を受ける必要があります。なお、この附帯業務を第三者に委託したり、本来業務を行わずにこの附帯業務のみを行うことは適切ではないとされています。

 

 

■【例外】-(4)収益業務

特に業種に制限なく収益活動を行うことができますが、これが認められる主体は「社会医療法人」に限られますので注意が必要です。

また、建前上は業務範囲に制約はありませんが、定款変更の認可を受ける際に指導やチェックが入りますので、事実上の制約はやはり存在します。

 

■最後に

以上の説明は、あくまで医療法人が主体となって行う場合の話です。株式会社を別途設立し(いわゆるメディカルサービス(MS)法人)、別法人として業務を進める手段もありますので、どちらがメリットが大きいのか、十分検討する必要があります。



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