退職時の年休消化

退職時の年休消化

2015年01月29日(木)1:10 PM

本日の質問

退職が決まった職員が、退職日までに未消化の年次有給休暇を全部消化したいと申し出てきた。人員や引継ぎの都合で業務に支障が生じる恐れがあり、申し出を拒否しようと思うが、問題ないか。

本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹

この場合、原則として、職員の年休消化の申し出を拒否することは認められません。

本日のポイント

●年次有給休暇は、労働基準法により労働者の権利として認められた休暇であり、一定の例外を除き、原則として労働者が希望する時季に付与しなければなりません。

 

●上記例外に該当するのが、使用者の時季変更権(労働基準法39条5項)ですが、これは「事業の正常な運営を妨げる場合に、労働者の申し出た時季を使用者が変更することができる権利」です。

 

●時季変更権は、あくまでも「時季の変更」であり、年休の付与自体を拒否できるものではありません。また、通常時であれば事情により変更が認められる余地がありますが、退職を間近に控えている場合には変更する余地がないため、今回のケースにおいて時季変更権を行使することは難しいと言えます。

 

●このため、今回の問題の意向に沿って職員に退職してもらうには、次の3つの選択肢から検討することになります。

 

(ア)自院の人員体制や業務引継などの事情について本人とよく話し合い、十分に納得してもらった上で、年休消化を辞退してもらう。

 

(イ)当初の希望退職日までは出勤してもらい、その間に後任補充、業務引継ぎを済ませ、その後、未消化の年休を全て消化してもらう(退職日を先延ばししてもらう)。

 

(ウ)上記(イ)と同様に、当初の希望退職日まで出勤してもらい、未消化の年休は買い上げる(当初の希望退職日に辞めてもらう)。

 

●上記(ウ)の年休買い上げには、幾つかの留意点があります。安易に買い上げを認めるのは良くありません。

・年休買い上げは退職時のみに認められたもので、通常時に行うのは違法。

・買い上げ額は必ずしも日給相当でなくてもよいが、本人と協議をしたうえで決定する。

・一度認めてしまうと前例となり、今後退職する職員からも買い上げの請求を受ける可能性がある。



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