降職の有効性

降職の有効性

2015年01月29日(木)1:20 PM

本日の質問

当院の師長を務めている職員が、その職責を十分に果たすことができていないため、師長の任を解き、一般職に降職させることを検討しているが、問題ないか。

本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹

人事権の行使としての「降職」は、病医院の裁量に広く委ねられており、特段に恣意的な理由が認められない限り、問題はないと考えられます。

本日のポイント

●今回の問題のように師長や主任、事務長といった役職の任を解くことを「降職」と言いますが、降職には次の2つのパターンがあります。

 

(ア)懲戒処分としての降職
(イ)人事権行使としての降職

 

●上記(ア)の場合、就業規則上の根拠の有無や、適性な手続きが行われたかどうかのプロセス面などから、権利濫用に該当しないかを厳しく判断されます。

 

●一方で、上記(イ)の場合、就業規則上の根拠の有無が問われることはありません。また、過去の判例等により、企業の人事権として病医院の裁量が広く認められています。但し、企業の裁量権を逸脱するような特段に恣意的な理由が認められる場合には、降職が無効とされることがあるのでご注意下さい。

 

●裁量が認められるかどかの判断要素は以下の各事項です。

・病医院側の業務上、組織上の必要性の有無、程度
・職員側の責任(能力・適性の欠如など)の有無、程度
・職員の受ける不利益の程度
・当該病医院における昇進・降職の運用状況

 

●判例によると、具体的には以下のようなケースがありました。

 

【バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件 東京地判平7.12.4】

「経営トップの変更により打ち出された合理化策に対し、非協力的な立場をとったとして降職」→有効

 

【上州屋事件 東京地判平11.10.29】

「部下や顧客とのトラブルが絶えず、店長としての能力が欠如していたとして降職」→有効

 

●なお、役職に応じた手当を支給していて、降職に伴ってその金額が減額または不支給となる場合、その金額変更は原則として有効とされています。但し、給与規程等で手当の基準が明確になっていない場合、金額変更については無効とされる恐れもあるので、ご注意下さい。



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