始業時刻前の出勤時間
本日の質問
▼当院では就業規則で始業時刻を9時と定めているが、始業時刻ギリギリに出勤されては診療が遅れるため、同規則に始業時刻の10分前に出勤することを義務付けるよう規定を加えた。10分前に出勤できなかった場合でも賃金カットを行うことはないが、このような規定は問題ないか。
本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹
始業前の10分に行う業務が明確に定められている場合や、遅れた分の賃金をカットするような不利益措置を課している場合には労働時間に当たるが、単に10分前の出勤を課すだけでは労働時間に当たらない可能性が高い。
本日のポイント
●始業時刻が9時だからと、毎日9時直前に出勤して、仕事にとりかかるのが遅くなる職員がしばしば見受けられます。これでは当日の業務開始に必要な準備の時間がとれずに、十分なパフォーマンスを発揮しにくいので、経営としては困ったものです。
●このような職員が多いと業務に大きな支障が出る恐れがあるため、本日の問題のように就業規則上で始業10分前の出勤を義務付ける対策も考えられます。
●ですが、出勤を義務付けた場合に、出勤から始業までの時間が労働時間として取り扱われるようであれば、その間の賃金の支払い義務が生じますし、そのために、1日の労働時間が8時間を超える場合には、割増賃金まで支払わなければならないために注意が必要です。
●一般に労働時間は「使用者の指揮監督下にある時間」とされており、これには現に作業等をしていなくも持ち場での待機は命じられているような「手待ち時間」も含まれます。
●このため、10分前に出勤させて明確にカルテ準備等を義務付けているようでしたら労働時間に当たりますし、患者がいなくても自分の持ち場に待機するよう命じていれば手待ち時間に当たる可能性が高くなります。
●また、始業10分前に遅れて出勤した者に対して、賃金をカットするなどの不利益な取扱いを課す場合には、労働時間に当たります。
●このため、この10分間が労働時間に当たるかどうかは、病医院が命じる義務付けの内容、不利益の程度等により判断されることになります。
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