病院・クリニックのための「窓口未収金対策のポイント」
本日の質問
窓口負担金の未収を発生させない工夫を教えてください。
▼窓口負担金の未収滞納が増えています。窓口未収を増やさない工夫は
ありませんか。
本日の回答/税理士 吉田正一
以下の3つに分けて回答致します。
1)窓口未収対策のあらまし、考え方
2)窓口未収の予防策
3)窓口未収の初期対応の
1)窓口未収対策のあらまし、考え方について
窓口未収金は 事務だけの問題ではありません。
窓口業務の外部委託も進んでいるので、医療スタッフと窓口スタッフが
定期的に 情報共有をして、共同して 窓口未収金対策を講じる必要があります。
窓口未収金対策の流れ
1)まずは 未収金の発生原因を知る
2)未収金の発生原因を 医療スタッフと共有する
3)未収金の発生を 予防する
4)未収金発生の直後に 初期対応する
5)小さい未収金でも 督促回収する
未収金の発生原因の例
・医療サービス(担当医、職員、窓口会計)への患者の不満
・予想以上に高い医療費(医療費は 小遣いから支払われる)
・窓口担当者の管理能力不備など
患者の不満の現れが 窓口金を払わないことなら患者の不満を知る必要があります。
患者の不満を知る方法は
・患者相談窓口を設置する
・患者の会を設け、患者の声を収集する
・患者アンケートを 実施する
・ビデオカメラにより 業務を観察する
窓口金を払えない理由が予想以上に高い医療費 だったからなら次の対応を検討すべきです。
・治療回数を増やす(医療費分散)
・次回診療時の診療内容、医療費予定額を説明する(文書で知らせる)
2)窓口未収の予防策について
窓口未収金の予防策として 次のような対策があります。
・預り金制度を設ける
・分割払い制度を設ける
・保証人を付ける
・入金と引換に薬品(処方箋)を引き渡す
・入金確認後に退院手続をする
・自由診療は 信用調査の上与信限度を設ける
・自由診療は クレジットカード決済にする
預り金制度の流れ
1)事前に患者負担金を一部入金してもらう
2)預り証を渡す
3)退院時、治療終了時に精算する
預り金制度が有効なケース
・入院料、手術料、分娩料
・夜間外来(窓口レジ締め後)の概算預り金
分割払い制度の流れ
1)保証人を付ける
2)複数の連絡先(固定電話、親の電話、携帯電話、メール等)を記録する
3)支払誓約書を作成する
4)分割支払計画書を作成する
5)支払予定日に連絡する
6)未払時に保証人に連絡する
手持ちのお金がない場合
・今あるお金を預かる(次回 全額支払いは避ける)
・今日(または明日中)に 支払に来るように 要請する
患者の支払能力を知るポイント(窓口担当者の情報収集力が危険回避につながる)
患者の次の情報を収集しておく。
・勤務先、仕事内容
・転職していないか
・家族は どこにいるか
・保険者(国保等)へ変わってないか
・持ち家あるか
3)窓口未収の初期対応について
未収発生時の対応の流れ
1)発生直後に 担当医、患者相談窓口、院長へ報告
2)すぐ 回収方針を決める
3)すぐ 郵便督促
4)電話督促、FAX督促
5)訪問督促
6)法的対応、保険者請求など
初期行動は消滅時効の中断から初期行動の例
・契約書、領収書等の事実書類を収集する
・窓口未収金を承認する書類に署名をもらい保管する
・返済予定日を記載した書類に署名をもらい保管する
・一部入金してもらい、領収書控えに署名をもらい保管する
・内容証明郵便(配達証明付き)により 請求する
電話、FAX、訪問による督促の注意点
・恐喝、詐欺にならないように注意
ブラック患者(悪質な未払患者)の対策
・他の医療機関と情報共有
・弁護士、警察へ相談
法的対応のポイント
・消滅時効(3年)について 弁護士から説明を受ける
・費用対効果(弁護士費用、裁判の手間)を考える
・勝訴しても 窓口金を回収できるとは限らないことに注意
法的対応のメリット
・次のブラック患者を 引き寄せない(狙われにくい)
法的対応の例
・未収金を貸付金にする
・不動産に担保を設定する
・連帯保証人をつける
・契約書を公正証書にする
・遅延賠償金条項、遅延利息の加算を追加する
・少額訴訟、強制執行など