病院・クリニックにおける時間外労働と法内残業の考え方
本日の質問
時間外労働と法内残業という言葉がありますが、それぞれの意味を教えて下さい。
本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹
最初に「残業」の定義について確認したいと思います。
◆残業とは・・・
法律用語ではなく、労働基準法で定義付けられたものではありません。
一般的には、病医院の所定労働時間を超えて労働した時間です。
労働基準法上では、この残業と同じような意味で、「時間外労働」という言葉があり、こちらは次のとおりに法律で明確に定義が定められています。
◆時間外労働とは・・・
法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働をさせた時間です。
もう一つ、法内残業という言葉があますが、これはどのような意味があるのでしょうか。
◆法内残業とは・・・
法律用語ではありませんが、一般的には所定労働時間を超えて、法定労働時間の範囲内で行った残業時間「所定労働時間=法定労働時間」の場合、残業は全て時間外労働となります。
が、例えば1日7時間労働の場合、7時間を超えて8時間(法定労働時間)までの残業は法内残業時間となります。
時間外労働と法内残業は、下記の事由により、それぞれを区別する必要があります。
1)36協定の届出義務
時間外労働を行わせる場合、時間外労働を行わせる必要のある具体的理由や、業務の種類、人数、1日や1ヶ月における延長することができる時間の限度、有効期間について、労使協定を結び、事前に労働基準監督署に届出なければなりません。*労働基準法36条にこの定めがあるため、『36協定』と言います。
2)割増賃金の支払義務
時間外労働を行わせた場合には、通常の賃金の2割5分*以上の割増賃金を支払わなければなりません。
*職員数100名かつ資本金5,000万円以上の病医院は、1ヶ月60時間超の時間は5割以上
3)具体例
下図のように、1日の所定労働時間が7時間のケース
【始業時刻:9時、終業時刻:17時、休憩時間:1時間】では、
9時~ 17時~ 18時~
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[ 所定労働時間(7時間) ][ 残 業 ]
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[ 通常の賃金 ][ 法内残業 ][ 時間外労働 ]
残業代単価 (1.0) (1.25)
所定労働時間を超えて労働しても、17時から18時までの労働に対する残業代は、通常の労働に対する賃金のみの支払いで済み、2割5分以上の割増賃金が必要となるのは、あくまで法定労働時間の8時間を超えた、18時からの時間外労働に対してとなります。