フレックスタイム制とは
本日の質問
労働基準法で認められたフレックスタイム制について、詳しく教えて下さい。
本日の回答/社会保険労務士 長友秀樹
●今回は「フレックスタイム制」に関するポイントをご説明いたします。
●フレックスタイム制とは、以下のように労働時間を取り扱う制度です。
【制度の意味】
職員があらかじめ定められた一定期間(例:1ヶ月)の総労働時間の範囲で、各日の労働時間を自分の裁量で決めて、働くことができる制度です(労働基準法第32条の3)。
●病医院おける受付スタッフや看護師等の専門職については、出退勤時間を本人の裁量にゆだねることは難しいので、あまり馴染まない制度です。しかし、営業や企画、システムなどの専任担当者がいて、本人の自主性に任せて働いてもらった方が効率的な場合は、採用を検討してもよいと言えます。
●フレックスタイム制では、以下のように「コアタイム」と「フレックスタイム」を設定します。
【コアタイム・フレキシブルタイム】
フレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務していなければならない「コアタイム」と、いつでも出勤または退勤しても良い「フレキシブルタイム」に分けています。
コアタイムの設定は義務ではないので、病医院が任意で設定の有無を決めます。
但し、コアタイムを定める場合、コアタイムが1日の労働時間のうちほとんどを占めていて、フレキシブルタイムが極端に短い場合などは、フレックスタイム制として認められない可能性があるのでご注意下さい。
●フレックスタイム制の導入は、就業規則で始業・終業時刻を職員の自主的な決定にゆだねる旨を定めたうえで、労使協定で次の各事項を定めて下さい。
(1)対象職員の範囲
(2)清算期間
(3)清算期間における起算日
(4)清算期間における総労働時間
(5)標準となる1日の労働時間
(6)コアタイム
(7)フレキシブルタイム
●以下の事項を労使協定で定める必要があります。
(1)対象職員の範囲
フレックスタイム制を適用する職員の範囲を明確にする必要があります。
受付スタッフや看護師等については、出退勤時間を本人の裁量にゆだねることは難しいので、あまり馴染まない制度です。
しかし、営業や企画、システムなどの専任担当者がいて、出退勤を本人の自主性に任せて働いてもらった方が効率的な場合は、それらの職種の職員に対して適用する旨を明記します。
(2)清算期間
1ヶ月の範囲内で清算期間を定め、フレックスタイム制を適用する期間を決めることになります。一般的には、賃金計算期間に合わせて1ヶ月とします。
(3)清算期間における起算日
清算期間を定めたうえで、その起算日についても毎月1日とか16日といったように明確に定める必要があります。
(4)清算期間における総労働時間
フレックスタイム制では所定労働時間を1日単位で固定せず、1ヶ月を上限とした清算期間単位で所定労働時間を定めます。従って、各日の労働時間は本人の裁量により短い日があっても構いませんが、ここで定める清算期間における総労働時間は、働かなければならないということになります。
(5)標準となる1日の労働時間
「標準となる1日の労働時間」は所定労働時間ではありませんので、職員がここで定める時間を必ず働かなければならないものではありません。これは職員が年次有給休暇を取得した際に、その日を何時間働いたものとして扱うかを明確にするためのものです。
(6)コアタイム
コアタイムは、職員が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。
コアタイムの設定は法律で義務付けられたものではありませんので、病医院が任意で設定して下さい。
設定にあたっては、日によってコアタイムの時間帯を変えることもできますし、1日の中で分割することもできますが、必ずコアタイムの開始時刻と終了時刻を明確にする必要があります。
但し、コアタイムが1日の労働時間のうちほとんどを占めていて、フレキシブルタイムが極端に短い場合などは、フレックスタイム制として認められない可能性があるのでご注意下さい。
(7)フレキシブルタイム
フレキシブルタイムは、職員が1日のうちでいつでも出勤または退勤してもよい時間帯です。
フレキシブルタイムに制限を設ける(コアタイムを設ける)場合には、その開始時刻と終了時刻を明確にする必要があります。
また、フレキシブルタイムの時間帯が30分単位となっていて、その中から始業時刻または終業時刻を選ぶような制度は、始業及び終業時刻を職員が自主的に決定しているとはいえず、フレックスタイム制の趣旨に反するため注意が必要です。
【フレックスタイム制のイメージ】
6時 9時 10時 12時 13時 15時 17時 21時
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フレキシブルタイム コアタイム 休憩 コアタイム フレキシブルタイム
・10時から15時の間は必ず労働しなければならないが(休憩時間除く)。
・始業は、6~10時の間で個人の判断に委ねる。
・終業は、15~21時の間で個人の判断に委ねる。
・日々の始業・終業は労働者個人に委ねるが、労使協定締結事項(4)で定めた月間総労働時間は労働しなければならない。
●フレックスタイム制は、職員があらかじめ定められた一定の精算期間(例:1ヶ月)の総労働時間の範囲で、各日の労働時間を自分の裁量で決めて、働くことができる制度です。
●フレックスタイム制で定めた清算期間における総労働時間に対して、実際に職員が働いた時間に過不足が生じた場合、労働時間をどのように取り扱うのでしょうか。
具体例を下記に示します。
労働時間の過不足の取扱い
例:ある年の2月の精算期間の場合
清算期間の総労働時間:133時間(1日標準時間7時間×19日)*1
法定労働時間の総枠 :160時間(1週法定労働時間40時間×28日÷7)*2
*1 精算期間の総労働時間は病医院が労使協定により定める
*2 労働基準法で定められた各月ごとの労働時間の上限
○職員A
実労働時間 過不足時間 (ア)所定外労働時間 (イ)法定外労働時間
170時間 +37時間 27時間 10時間
○職員B
実労働時間 過不足時間 (ア)所定外労働時間 (イ)法定外労働時間
125時間 -8時間 0時間 0時間
●上記職員Aの例では、(ア)と(イ)の時間は病医院で定めた清算期間の総労働時間をオーバーした時間にあたるので、賃金支払による清算が必要となります。
(イ)については、月の法定労働時間の総枠もオーバーしていますので、時間外労働手当として2割5分以上の割増賃金の支払いも必要となります。
●上記職員Bの例では、実労働時間が病医院で定めた清算期間の総労働時間に対して不足しているので、こちらも清算が必要となります。不足した場合の清算方法には、次の2つの方法があります。
(1)当月の賃金支払い時に、不足時間分の賃金を控除する。
(2)当月の不足時間を、翌月の総労働時間に加算する。
上記(2)の方法をとった場合、翌月の総労働時間に加算できる限度は、その月の法定労働時間の総枠の範囲内となるので、ご注意下さい。
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